SECIモデルで考えるSI現場のドキュメントのあり方

今回はSECIモデルを元にドキュメントのあり方を考えてみました。
SECIモデル(せきもでる) - ITmedia エンタープライズ

SECIモデルってどんなん?

SECIモデルとはScrumの父の父、野中郁次郎先生の提唱するプロセスモデルです。
SECIモデルには「暗黙知」「形式知」の2種類あり、それを「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」という4つのプロセスを通して個人・集団・組織の間で相互に変換・移転することによって新たな知識が創造されるというものです。

SI現場の現状は?

マインドマップをドキュメント地獄から抜け出す糸口とする - ITエンジニアとして生きるでも触れましたが、SI業界にはドキュメント地獄な現場がとても多いと思います。
なぜこのようになってしまうのでしょうか?
私はSECIモデルでいう「連結化(Combination)」が抜けているためではないかと思っています。

SIの現場では「表出化(Externalization)」がゴールになっていることが多いように感じます。
何か問題が起こるたび、他チームと打ち合わせするたび、お客さんに説明するたびに新規での資料作成(表出化)を求められ、その場でその資料の役目はお終いというわけです。
役割を終えた資料は行き場を失い、メンテナンスされないまま残骸となっていくため、結果としてドキュメント地獄となってしまうのではないかと思っています。

また、際限なく資料を作成していきますから当然作成が追いつかなくなる場合があります。
そういった場合には十分に「共同化(Socialization)」されることなく「内面化(Internalization) =>表出化(Externalization)」へアプローチされることもあるかと思います。
このことによって

 「なんか他の資料と用語の使い方が違うからよく分からない」
 「資料が解釈出来なくて色んな人に確認するんだけど・・・聞く人聞く人によって答えが違う」

というイケてない状況が生み出されてしまうのだと思います。
(「内面化(Internalization)」の段階では個人的には納得している暗黙知の状態ですが、それはあくまで個人の話でチームで納得できた状態ではありません。そのため、それを形式知化した場合に根底の意図が伝わらない資料になる可能性は多分にあると思います。)


ではどうしましょう?

単純に「連結化(Combination)」のプロセスを導入する必要があると思います。
これを導入することにより、「表出化(Externalization)」で行き場を無くした資料たちを「連結化(Combination)」へ向かわせ、フィードバックループを回しだすことが出来ると思います。

もう少し具体的にいうと、第1段階として今ある資料を統廃合します。
たとえば

  • 「説明資料_20121210.xls」
  • 「説明資料_20121217.xls」
  • 「説明資料_20130108.xls」

のように大量生産されてしまった同じ系列のものは1つの資料に統合します。
また

  • 「3ヶ月間誰も開かないドキュメント」
  • 「中身の内容が明らかにレガシー化しているドキュメント」

廃合します。

そして統廃合後、第2段階としてそれぞれの資料同士を突き合わせて体系化/総合化をはかります。
その過程でさらに不要となったドキュメントは捨て去ります。

(「あとでやっぱり必要になるかも」という不安に苛まれてなかなか捨て去ることが出来ないかもしれませんが、そういう時はドキュメントもSCM管理とすれば良いでしょう。そうすれば、もしあとで必要になっても復元出来ますし。)


さいごに

マインドマップをドキュメント地獄から抜け出す糸口とする - ITエンジニアとして生きるでも触れましたが、「資料を作成する=負債を抱える」という感覚を持つことが大事だと思います。
まずはこういった負債を返済するために、きちんと断捨離しないとダメだと思います。

私はよく思うのですが、整備されていないドキュメント地獄の中から必要な情報を探すのって

「満杯になったゴミ箱の中から宝(本当に必要な情報)を見つける」
「難解な迷路を解き明かす」

ことに似ているように思います。
こんなことに時間と労力を使う暇があるなら、それをソフトウェアに向けてもっともっとイイもの作りましょう!って言いたいんです。

そんなことを考えてた今日この頃でした。